短編小説・寂玄術いま(5)『希望の光をもって』
- 2015.01.28 Wednesday
- 00:00
短編小説・寂玄術いま(5)『ひとすじの希望の光』
「さゆりのご両親のこともU君のことも成るようになる波が有って、寂玄術の元になる空想・想像を働かせれば容易に方向付けできるってことね」
美里はそう結論付けるように言った。
「うむ、そういうことだね」
さゆりの顔はすでに明るくなっていて、家族と過ごせる未来に光を見出しているようだった。
しかし、安易な気休めを断つように道徳は言った。
「確かに理論的にはそうなんだよ、だけどもね、一つ足りないものがあるんだよ。それは呼吸だよ」
「呼吸?」
美里とさゆりは同時に言った。
「そう」
「息は波なのだけれども、同時に宇宙のプラーナというものを吸い込むことのできるものなのだよ。プラーナというのは物質以前の霊気みたいなものだ。このプラーナには創造の力がある。だから空想・想像と共にプラーナを一つにして念じて空・虚と化すんだ。すると創造力を発揮するんだ」
「ビッグバンみたいに、解き放つってことね!」
「なるほど、そうなのねー」
さゆりは嘆息した。
「けれどもね、寂玄術には一つ誤謬があるんだよ」
道徳は静かに言う。
「寂玄術の施法で『月の世界へ旅行』した岡崎博司氏の体験談が出ている。こんなことが書いてあるよ」
「…銀河の様なものがあり、どこまでも高低のある平原らしきものが続いている、家らしいものはなく、人の棲息した跡がない、植物はあるが高山植物に似て短いものばかり、草も見た事のないもののみである、熊と狐の混血児らしいものが居たと思う…」
「!?」
「要するにね、桑田先生でも時代の壁は越えることはできなかったということだよ。究極の霊術でも本当に月に行かせることはできなかったということ。ものごとは昔より今のほうが発達発展しているから…。だから、波の来ている『いま』のほうが昔にはなかった大きな可能性があるのだと思う」
「そうね…。時代の波と空想(思念)によって、大きな転換ができ、幸福を手にすることができるということだね」
美里は自分の理解したことを確認した。
「ありがとう美里!あなたの友情はいつまでも忘れないよ!ソウルメイトだね!」
「うん」
美里とさゆりは『ザ・ローリングス』のファンであり高校生以来の心の友だった。二人の親友は固く信頼の握手をした。
「ごらん、もうすっかり夕暮れだ。すばらしく紺がかった空に星が輝いているよ」
「あの星の輝きは、ひとすじの希望の光、天空の光だ!幸福へ導く光だよ!」
道徳は、希望と天空の光が二人の上にあることを明示し、二人の友情を温かく見守った。
「さゆりのご両親のこともU君のことも成るようになる波が有って、寂玄術の元になる空想・想像を働かせれば容易に方向付けできるってことね」
美里はそう結論付けるように言った。
「うむ、そういうことだね」
さゆりの顔はすでに明るくなっていて、家族と過ごせる未来に光を見出しているようだった。
しかし、安易な気休めを断つように道徳は言った。
「確かに理論的にはそうなんだよ、だけどもね、一つ足りないものがあるんだよ。それは呼吸だよ」
「呼吸?」
美里とさゆりは同時に言った。
「そう」
「息は波なのだけれども、同時に宇宙のプラーナというものを吸い込むことのできるものなのだよ。プラーナというのは物質以前の霊気みたいなものだ。このプラーナには創造の力がある。だから空想・想像と共にプラーナを一つにして念じて空・虚と化すんだ。すると創造力を発揮するんだ」
「ビッグバンみたいに、解き放つってことね!」
「なるほど、そうなのねー」
さゆりは嘆息した。
「けれどもね、寂玄術には一つ誤謬があるんだよ」
道徳は静かに言う。
「寂玄術の施法で『月の世界へ旅行』した岡崎博司氏の体験談が出ている。こんなことが書いてあるよ」
「…銀河の様なものがあり、どこまでも高低のある平原らしきものが続いている、家らしいものはなく、人の棲息した跡がない、植物はあるが高山植物に似て短いものばかり、草も見た事のないもののみである、熊と狐の混血児らしいものが居たと思う…」
「!?」
「要するにね、桑田先生でも時代の壁は越えることはできなかったということだよ。究極の霊術でも本当に月に行かせることはできなかったということ。ものごとは昔より今のほうが発達発展しているから…。だから、波の来ている『いま』のほうが昔にはなかった大きな可能性があるのだと思う」
「そうね…。時代の波と空想(思念)によって、大きな転換ができ、幸福を手にすることができるということだね」
美里は自分の理解したことを確認した。
「ありがとう美里!あなたの友情はいつまでも忘れないよ!ソウルメイトだね!」
「うん」
美里とさゆりは『ザ・ローリングス』のファンであり高校生以来の心の友だった。二人の親友は固く信頼の握手をした。
「ごらん、もうすっかり夕暮れだ。すばらしく紺がかった空に星が輝いているよ」
「あの星の輝きは、ひとすじの希望の光、天空の光だ!幸福へ導く光だよ!」
道徳は、希望と天空の光が二人の上にあることを明示し、二人の友情を温かく見守った。
(完)
天空の光、ひとすじ希望の光が二人には与えられたんだ! めずらしく完結したな! ほめてつかわすぞよ
(ご注意)
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同著者の過去のブログ記事一切(当ブログ以外の同著者のブログ記事も同様)に適用す。
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